新年度が始まり早1カ月。入学したばかりの新一年生も少しずつ学校に慣れてきたのではないでしょうか。
そしてランドセル売り場では、早くも2026年度入学に向けたランドセル商戦が始まっています。いわゆる”ラン活”は年々スタートが早くなり、値段の上昇も話題となる中、ランドセルの巨大化や登下校時の重量化による”ランドセル症候群“の影響を心配する声も上がっています。
この”ランドセル症候群“とは、どのようなものでしょうか。また、子供たちにどのような影響を与えるのでしょうか。
現在の売れ筋は”子供への負担が少ない”モデル

近年売られているランドセルの値段は、1万円ほどの物から10万円以上の物まで様々です。その中で最も人気の価格帯は4~6万円程度のランドセルがですが、選ぶ基準として重要視されているのは「子供のへの負担が少ない」ことです。
民間企業が実施したインターネット調査によると、ランドセルを「重い」と感じた小学3年までの児童は約9割にのぼったようです。
現に筆者の子供(現在小5)も、一年生の頃から「ランドセルが重くて、肩が痛い。後ろにひっくり返りそう」と通学が苦痛になっていました。さらに水筒や体操服、週の初めには上履きや給食エプロンなどを持っていくとなると、持ちきれないほどの大荷物となってしまい、車で送迎することもありました。
巨大化したランドセル
現在、小学生の教科書のサイズはA4サイズが最も多く、B5サイズが主流だった昭和~平成に比べてランドセルも大きくなっています。それに伴い、人工皮革を使用したランドセルでも1250グラム前後が中心となっていますが、このランドセルに教科書を入れた場合、平均の重さは約4キロにもなり、それが負担となって肩や背中の痛みを訴える子供が増えているのです。
この状況を受け、子どもへの負担を軽減する工夫を凝らしたランドセルが登場しています。まるで山登り用リュックサックのようにチェストベルトがついたものや、ランドセルの底の「回転鍵」などの金具やベルト類を減らして重さを1000グラム以下に軽減しているものもあります。
“ランドセル症候群”とは?
ランドセル症候群とは、重さ3キロ以上の荷物を背負って通学することで、筋肉痛や肩こり、通学への憂鬱感などを引き起こす状態を指します。まさに筆者の子供がこの”ランドセル症候群“でした。ある調査では、中身を入れたランドセルが3キロ以上になる児童は63%にもなるといい、入学後にランドセルの買い替えを検討する家庭も増えているようです。
もし以下の項目で3つ以上が当てはまる場合は注意が必要です。
- 教科書やタブレットを全て持ち帰っている
- 体操服や水筒をサブバッグで持ち運ぶ
- ランドセルの重さが3キロ以上ある
- 荷物の重さが原因で通学が辛く感じる
- ランドセルの中身に隙間がない
ランドセル売り場では、ランドセルに重りを入れて荷物を入れた状態を体験できるところが多くあります。気に入ったデザインのものが見つかったら、ぜひ店頭でお試しをしてみてください。
増加する子供の負担への対処
現在の小学生は、約20年前よりも学習量が増えており、教科書のサイズアップだけでなく、ページ数が約3倍も増加しているそうです。「脱ゆとり教育」や、2020年度から始まった新しい学習指導要領である「主体的・対話的で深い学び」という考え方が導入されたことによるものです。
しかしながら、”ランドセル症候群”も軽視できません。児童への負担を軽減するために「置き勉」を許可している学校もありますが、担任の先生の方針や自宅学習のため「置き勉をしない・できない」児童もまだ多くいるようです。登下校の様子や家での対話の時間でしっかりと観察し、子供の負担に気づいた場合は、学校との情報交換も必要です。
筆者の子供の場合、4年生ごろから教科書などを教室に置いて帰る「置き勉」ができるようになり、以前よりは負担が減ってはいますが、低学年の頃にこそもう少し配慮が必要だったように感じています。
まとめ
筆者が小学生の頃(約30年前)は、歩いての登校も体力づくりの一環だと言われていました。ですが当時は水筒も持たず、置き勉もこっそりしていましたし、当然タブレットもありませんでした。重いと感じる日もありましたが、毎日の通学が嫌になるほどではなかったように思います。
現代の小学生の体力や学力の低下も心配されていますが、そのために体を痛めてしまったり、学校へ行くことに抵抗を感じてしまっては元も子もありません。子供が「学校へ行くの嫌だな」と感じているのであれば、しっかりと話を聞いてあげましょう。もしも”ランドセル症候群”の可能性があれば、荷物を減らせないか学校に相談するなど、まずは親が共感する姿勢を持つことが大切です。「体の負担」だけでなく「心の負担」も減らせるよう、学校や地域と一体となって改善することが必要になってきています。